「もしかして、蟻に噛まれた?痛いしチクチクする!」
こうした状況にはどう対処すればよいか、分からないことはありませんか?
屋外で蟻に噛まれたり、刺されたりすることは実際によくあります。
童謡でも歌われている通り、蟻は身近で可愛らしい昆虫として一般的に認識されています。
しかし、蟻はスズメバチの親戚にあたり、中には強力なあごや毒針を持つ種類も存在し、世界的に攻撃的で恐れられている生物としても知られています。
蟻に噛まれたり、チクチクと痛い場合でも、正しい対処法を知っておくことで安心感が得られます。
今回は、蟻に噛まれた際の痛みへの対処法や薬、危険な蟻の種類、そして噛まれないための予防策について調査してみました。
蟻にかまれたときの対処法
蟻にかまれたり刺されたりした場合、以下のステップを試してみてください。
- 傷口を流水で充分に洗い流す。
- 抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟こうがあれば、傷口に塗る。
- 患部を冷やす。
- 医療機関を受診する。
傷口を流水で充分に洗い流す
蟻は種類によって毒を持っていることがあります。
傷口を放置すると、化膿や毒が全身に広がる可能性があります。
蟻にかまれたり刺されたりした場合は、まず最初に傷口を流水で丁寧に洗い流してください。
蟻が皮膚にとどまっている場合は、水で流すことで取り除かれるはずです。
万が一取り除けない場合は、ピンセットなどを使用して慎重に取り除いてください。
素手で蟻を触ると、手にも攻撃される可能性があるので注意が必要です。
できるだけ、スマートフォンなどで蟻の写真を撮影しておくと、後で皮膚科を受診する際に説明がしやすくなります。
抗ヒスタミン剤を含むステロイド軟こうがあれば、傷口に塗る
蟻に噛まれたり刺されると、しばしばチクチクとした痛みや腫れが続くことがあります。
炎症を和らげるために、抗ヒスタミン剤を含むステロイドの軟こうがあれば、それを傷口に塗ることをおすすめします。
使用した薬は、忘れないようにメモを取るか写真を撮るか、または実際の薬を持参して皮膚科の医師に相談してください。
適切な薬が手に入らない場合は、何も塗らないほうが良いです。
特にオロナインは、蟻に噛まれた傷口に使用すると悪化する可能性があるため、使用を避けてください。
患部を冷やす
蟻に噛まれた後、チクチクとした痛みは傷口が炎症している兆候です。
患部が熱を持っているため、冷やすことをお勧めします。
氷のうや保冷剤、または濡れたタオルを使用しても構いません。
冷やすことで痛みが軽減され、かゆみの症状も抑えることができます。
かゆみには手を出さないでください。
かゆみがあるからといって傷口をかくのは絶対に避けるべきです。
これにより細菌感染が引き起こされ、とびひの症状が現れたり、傷跡が残ったりする可能性があります。
医療機関を受診する
蟻の毒によって、アナフィラキシーショックと呼ばれる深刻なアレルギー症状が引き起こされることがあります。
ハチの毒と似た成分を含んでいるため、以前にハチに刺された経験のある人は特に注意が必要です。
蟻に噛まれたり刺された後、20分から30分以内に息切れ、動悸、めまい、吐き気、冷や汗、じんましんなどの症状が現れた場合は、直ちに医療機関を受診してください。
アナフィラキシーショックのない場合でも、早めに皮膚科を受診することをお勧めします。
診察時には必ず「蟻に噛まれた(刺された)」ことを伝え、蟻の写真や使用した薬についても詳しく伝えると、適切な治療が得られます。
市販の薬で一時的な症状緩和ができるかもしれませんが、専門家の診察を受け、処方された薬の使用がより効果的で迅速な回復につながります。
蟻に噛まれた際のチクチク痛みに対する薬
蟻に噛まれた後、チクチクとした痛みがある場合、即座に皮膚科に行くことが難しいときは、市販薬を使って一時的に症状を和らげることができます。
ただし、これはアナフィラキシーショックが発生していない場合の対処法です。
以下は、虫刺されの薬に含まれる成分の例です。
<虫刺されの薬に含まれる成分>
ステロイド: 炎症を抑える
・プレドニゾロン酢酸エステル
・プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル
・デキサメタゾン酢酸エステル
・ヒドロコルチゾン酢酸エステル
抗ヒスタミン: ヒスタミンの働きを和らげかゆみを抑える
・ジフェンヒドラミン塩酸塩
・クロルフェニラミンマレイン酸塩
抗炎症成分: 炎症を抑える
・サリチル酸メチル
・グリチルレチン酸
局所麻酔成分: 知覚神経に作用し、かゆみを抑える
・ジブカイン塩酸塩
・リドカイン
かゆみ止め: かゆみを抑える
・クロタミトン
殺菌成分: 皮膚のかき壊しによる細菌感染を抑える
・イソプロピルメチルフェノール
・クロルヘキシジン塩酸塩
蟻に噛まれた部分がチクチク痛む場合、これらの成分を含む市販薬が役立ちます。
お子さんが蟻に噛まれると、ただチクチクと痛いだけでなく、かゆみも出てしまい、どんなに注意してもついついかいてしまいますよね?
そんなときに役立つのが、かゆみ止めパッチです。
かゆみ止めパッチを傷口に貼っておくと、かくことによる細菌感染やとびひを防ぐことができます。
可愛らしいポケモンのデザインがプリントされているので、貼る際にお子さんも嫌がらないでしょう。
蟻に噛まれてチクチク痛いくらい、平気かな?
「蟻に噛まれたけど、まあ、蟻だから大丈夫でしょう!」と過信してはいけません。
身の回りにいる蟻でも、知られざる種類がたくさんいます。
世界には10,000種以上の蟻が存在し、日本だけでも295種が確認されています。
中には「蟻に噛まれても問題ないだろう」とは言えない攻撃的な種類もいます。
日本に生息する蟻について一般的な知識を持っておくことで、危険な蟻に遭遇した場合の対処法も理解し、安心感が得られます。
蟻の暮らし
蟻は大まかに2つのタイプに分かれます。
雑食性の蟻と吸蜜性の蟻です。
雑食性の蟻
虫の死骸が好物
餌を運ぶことがある
住宅周辺によく見られる
吸蜜性の蟻
砂糖や蜜が好物
餌を運ぶことは少ない
緑のある場所、例えば雑木林周辺に生息
雑食性の蟻は住宅周辺に多く、よく遭遇します。
蟻の増殖
蟻は冬眠はしませんが、冬場は動きが鈍くなり、春から活動が活発になり、増え始めることが一般的です。
1か月から2か月の間に、卵→幼虫→さなぎ→成虫へと成長します。
日本の蟻は春から初夏にかけて女王蟻が卵を産み続け、夏になると羽化したオスとメスが飛び立ち(結婚飛行)、新しい場所で集団(コロニー)を形成します。
蟻の社会性
蟻は社会性を持つ昆虫の一種です。
女王蟻を中心に卵や幼虫のお世話をする働き蟻、餌を捕る働き蟻、それを監督する兵隊蟻、繁殖のためのオス蟻…とそれぞれが役割分担して集団での生活を営んでいます。
巣の外にいる蟻はほんの一握りで、蟻全体の3%に満たない割合です。
残りの97%は巣の中で様々な活動をしています。
蟻たちはフェロモンを発して仲間内で情報を共有し、餌の位置や危険をお互いに知らせ合っています。
巣が危険にさらされると、彼らは集団で応戦してきます。
無防備に地面に座ったと思ったら、実は獰猛な蟻の巣の上にいることになるかもしれません。
蟻を巣ごと駆除したい場合は、「アリの巣コロリ」が有益な対処法です。
日本の危険な蟻
日本でよく見られるクロオオアリやクロヤマアリは、比較的危険性が低い種類です。
これらの蟻が思い浮かぶことが多いでしょう。
彼らは主に日当たりの良い乾燥地に巣を作り、公園や校庭などで見かけることがあります。
お子さんが触れてしまっても、大抵は安全な蟻の一種です。
!注意
クロオオアリやクロヤマアリは、強くつまむと「蟻酸(ぎさん)」と呼ばれる酸っぱい液体を放出することがあります。
この蟻酸が目に入ると失明の危険があるため、触れてしまった手は迅速に流水で洗い流してください。
在来種の中にも毒針を持つ蟻が存在しますが、彼らは積極的に人を襲うことはなく、遭遇することはまれです。
万が一刺されて痛みを感じても、ほとんどの人が数日で腫れが収まります。
オオハリアリ
日本生まれの蟻で、体長は4mm〜5mm。大アゴと脚は鮮やかな褐色で、他の部分は黒色をしています。
彼らが毒針で刺すと、激痛やチクチクといった感覚ではなく、むしろズシンとした痛みがあり、患部は赤く腫れ、熱を帯びます。
積極的に人を襲うことはありませんが、庭仕事などでまれに刺されることがあるので、警戒が必要です。
症状は通常、数日で収まりますが、アナフィラキシーショックを引き起こす例も報告されています。
刺されたら、医療機関での診察が必要です。
オオハリアリは朽木に巣を作り、主にシロアリを摂取してくれるため、益虫と見なされています。
彼らは本州南岸、四国、九州、南西諸島、小笠原諸島に生息しています。
クシケアリ
起源は不明ですが、東南アジアの北部全域と高山地域に広く分布しています。
日本では主に寒冷な地域で、東北地方より北でよく確認されます。
体長は約5mmで、黒褐色の外観をしています。
彼らは毒針を持ち、オオハリアリよりも強力な毒性があると言われています。
クシケアリは人を積極的に襲うことはなく、オオハリアリに比べて刺される被害の報告は少ないです。
また、ゴマシジミという蝶と寄生関係にあり、この蝶の幼虫はクシケアリの幼虫を摂食して成長し、クシケアリはこの蝶が分泌する液体を食事とします。
イエヒメアリ
起源はアフリカまたはインド周辺、あるいは南米とされていますが、具体的な情報は分かりません。
現在、ヨーロッパ、南北アメリカ、オーストラリア、東南アジアなど、世界中に広く分布しています。
体長は2mm〜2.5mmで、全体的に淡い黄色をしています。
愛らしい名前とはうらはらに、微細な針を持ち何度も刺すので、チクチクと痛みます。
肌の敏感な人は赤く腫れることもあります。
菓子から残飯、魚の干物まで、人間の食べ物を何でも食べる雑食性を持ち、寒冷地域が苦手なため、温かい屋内に侵入してきます。
彼らは家の壁の内部、木製の家具や押し入れの中、床板の隙間などに巣を作ります。
1つのコロニーには複数の女王蟻が存在し、屋内のさまざまな場所に分散して生息するので、駆除が難しい厄介な存在です。
日本では本州、四国、九州、南西諸島、小笠原諸島で見られます。
アギトアリ
伝説の蟻とされ、密かに森の中で生息し、一般の目に触れることはほとんどありません。
体長はおおよそ10mmで、茶褐色から黒褐色をしています。
彼らは毒針を持ち、刺されるとオオハリアリよりも痛みが強いと言われています。
アギトアリの特筆すべき点は、180度に広がる大きなアゴで、その閉じる速さは世界でも最速とされ、この蟻に噛まれた昆虫は逃げられません。
彼らは主に屋久島、種子島、そして鹿児島県の限られた地域に生息しています。
危険な蟻の中での特定外来生物
近年、外国船や飛行機の荷物に紛れ込み、人を攻撃する危険な外来種の蟻が日本に侵入している傾向が見られます。
国は特定外来生物に指定し、これに対する警戒を強化しています。
一部は水際での防御に成功しているものの、日本国内で巣を築き、生息を確立してしまった種類の蟻も存在します。
<特定外来生物>
外来生物法に基づき、国が指定した生物を指します。
これらの生物は飼養・運搬・保管・輸入・譲渡・放出などが規制されています。
特定外来生物の中には生態系を破壊したり、人の生命・身体、農林水産業に害を及ぼす可能性があるため、これに該当するものが厳格に指定されています。
ヒアリ
アメリカで毎年100人以上の死者を出し、「殺人蟻」とも呼ばれている危険な蟻です。
南米原産の蟻であり、アメリカ、カリブ諸島、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、中国に分布しています。
一度定着すると根絶が極めて難しく、現在のところニュージーランド以外では完全に駆除されていません。
体長2.5mm~6mmで、全体的に光沢のある赤褐色をしています。
特徴的なのは、草地などに直径25cm~60cm、高さ15cm~50cmの蟻塚を築くことです。
毒針を持ち、刺されると猛烈な痛みがあり、その後もチクチクとした痛みが続きます。
刺された部位には小さな赤みが現れ、翌日にはその中央に膿がたまり、かゆみも発生しますが、かきむしってはいけません。
応急処置としては、患部を濡れたタオルや保冷剤で冷やし、早急に医療機関を受診することが重要です。
刺されてから20~30分は安静にし、体調の悪化に気を付けましょう。
ハチに刺された経験のあるアレルギー持ちの場合、ヒアリに刺されると全身にじんましん症状が出ます。
これに加えてアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があり、呼吸困難や腹痛などが現れ、進行すると血圧が急低下し、失神することもあります。
処置が遅れると命にかかわることがあるため、速やかに救急車を呼ぶ必要があります。
ヒアリは国内で初めて2017年6月に兵庫県尼崎市で確認されましたが、現在は主要な港湾地域での侵入を警戒しており、まだ定着はしていません。
アカカミアリ
アメリカ原産の蟻で、体長は3mm~5mm。
頭が褐色で他の部分が赤褐色という外見から、ヒアリと混同されることがあります。
ヒアリと同じく毒針を持ち、刺されると水泡状に腫れ上がります。
毒性はヒアリほど強くありませんが、じんましん症状が出ることもあり、医療機関への受診が必要です。
人を刺す能力や集団で水に浮かんで移動するといった、ヒアリに似た性質を持ち、非常に強い生命力があります。
国内では硫黄島や沖縄での生息が確認されています。
アルゼンチンアリ
南米発祥の蟻で、体長は2mm~3mm、黒寄りの茶褐色をしています。
雑食で攻撃的で、非常に速い動きを見せます。
毒針はないものの、強力な噛みつきで、噛まれると激しい痛みがあり、時には跡が残ることもあるようです。
巣は土の中だけでなく、屋外のマット、植木鉢、ブロックなどにも作られるので、これらの下になるところに巣を作られないように気をつけることが重要です。
1つの巣には多くの女王蟻がおり、大規模な軍団を形成します。
他の蟻やハチの巣、鳥の巣にも侵入し、これを壊滅させる凶暴な蟻で、生態系に深刻な影響を与えます。
国内では1993年に広島県廿日市市で初めて確認され、現在は東海・関西・中国地方で生息しています。
蟻による噛みつきを防ぐ方法
嫌なことに、蟻に噛まれたり刺されたりするのはいやですよね。
噛みつかれないように、あらかじめ対策をしておくと安心です。
特に屋外での活動時には、以下のポイントに気をつけましょう。
- 肌を露出させない
- 長袖、長ズボン、靴下を着用
- 帽子、サングラス、マスク、首にタオルを巻くことで対策
- 虫よけスプレーを使用する
- 地面に直接座ったり、寝そべったりしない
- 片付けと定期的な掃除
- 食べ物を出しっぱなしにしない
- 食べこぼしをそのままにしない
- 屋外ではサンダルや靴をそのままにしない
蟻に噛まれた箇所がチクチクと痛む場合の対処法は?まとめ
蟻にかまれたらチクチク痛いけど、正しい対処法を知ろう
蟻にかまれるとチクチク痛むけど、その症状には薬で対処しよう
危険な蟻にかまれたら、チクチク痛いこともある
蟻は童話や童謡にも出てくる親しみやすい虫ですが、実際には攻撃的で怖い一面もあります。
子どもたちは気軽に触れがちですが、対処法を誤ると厄介なことになりかねません。
蟻の特性と対策を理解し、上手に付き合っていきましょう。